甲午の夏 東學黨の韓山を亂るや、
天佑俠と稱する神州健兒の一群あ
り、血盟して之に投し、奇謀を籌
らす神の如く、奮擊突戰疾風迅雷
の勢を以て南韓五十六州を蹂躪し、
遂に日淸戰爭を激成したる、撼天
動地絶壯絶快の活劇は、彼れ天佑 俠の沈默によりて未だ人に知れざ
る也、方今極東の風雲再び險惡を
極め、暗雲慘憺將に急變を來さん
とする玆に半載、大雷耶、大雨耶、
議論畢竟世に效なきの秋、特に此
書を刊行して以て之を公にす、此
裏豈に一片の微意なしとせんや。